退屈でしょうがない秋の夜に
雨でも降ればいいのにと思って窓のほうを見ると、
夜はこの部屋さえ取り込んでしまおうと、べっとりとガラスに顔を押し付けている。
そこで、ぶらさがった紐を引っ張って電気を消し、少しだけ暗闇を招き入れてやる。
すると、すかさず部屋に這入ってきて、その輪郭は薄く、曖昧になった。
僕は卓上ライトと画面の明りだけで充分だから、困ることはない。
光に滲む紫煙はゆらゆらと立ち上っては夜に消えてゆく。
明りの下で僕の手は、
マウスを掴み、揺り動かしては離したり。
煙草をつまみ、圧し付けたり。
がしゃがしゃと頭を掻き、顎鬚を延々と引っ張ったり。
指先で机や鍵盤を不規則に叩いたりしている。
どうやっても埋まらぬ寂しさが、この両の手を慌ただしく動かし続けている。
国道を走る車が、路面を軋ませながらどこかへ去ってゆく音だけが聞こえる