家から職場のある駒込の住宅街の某所までは、バイクでだいたい30分。電車で1時間かかり運賃は片道420円。
バイクはとんでもなく便利だけど今ちょっと寒い。
電車は道中本を読めたり、いろんな人の中に混ざるので面白いけどお金がかかる。乗り換えも2回あるから面倒だし、僕はお金が全然ないのだ。
毎回840円の積み重ねで古本がどれだけ買えるかを引き合いに出せば、電車に乗ることは全くの悪手だ。
そんな感じで、財布や腹に溜まり始めたぜい肉や有り余る時間のことについて考えていると、歩けばいいのではないかと思いついた。
グーグルマップの試算では10kmの道のりを2時間で行けるのだという。
業務開始が11時なので、8時半に家を出ればいい。それでも鉄工所時代の同業者には申し訳ないほど、朝の時間に余裕がある。おにぎりを作って持ち歩けば節約にもなりそうだ。
道中、何か思いついた時に書き込むための手帳とペンだけ用意しておけば生産性は充分だし、あまり複雑なルートでもないので歩みを緩めずに本も読めるだろう。
そういえば小学生の頃、「俺は二宮金次郎だ」なんて自惚れながら小説を読みつつ通学していた記憶が甦ったので、距離を調べると1.4kmだった。若干の歩幅の差こそあれ、今回の試みとの規模の違いを思い知る。
しかしながら大村益次郎は生家の鋳銭司から、当時政庁があった山口まで18kmの道のりを山を越えて徒歩出勤していたそうであるから、人間にできないことではないとも知る。
どうせなら小学生時代の自分よりも大村益次郎と張り合う積もりである。
歴史はそんな風に、現世における奇行を許容し、むしろ広がりや楽しみを持たせてくれる一面がある。