肌寒い夜はクライアントと現実との間に厚い厚い幕を引く。
アレキサンドラは西大陸の砂漠にいる。じっとりと汗を浮かべて、足の指の間、じゃりじゃりと、苛立つ。
ラジオの声、魚はプラスチックトレーの棺桶で眠る。
スーパーベースは宇宙からの超高音と同響する。存在と無の混在サラダ。
横浜の埠頭に引っ掛かるダリの口髭と海亀の目。
遠くから訪ねてきた近視眼的なプレタポルテ。
大好きだ。社員の椅子を舐める。
爆発した吐息。
本日は規則性を保つ。
排水孔の竜巻がこちらに近づいてくる。
曾我兄弟は口を揃えて言った「あなたの番じゃありません?」
女の声がするので大きな窓に頬を擦り付けた。すると見えたのは紫色した豆ダルマ。
ニヤニヤしたギターサウンドがにちゃにちゃと耳にベタつく。止めてくれ止めてくれ止めてくれ。
目を抉り出したギリシャ悲劇の男が潰れた義眼片手にほくそ笑む。
23:09のゴリラやその耳。
クロック、クロック、クロック、クロック!クロック!
プーケットのコンクリートに噛みつく男は「もう一度」とつぶやく。
…妙な夜だった。通りはまるで閑散としていて、それでいて…