何も本当らしく感じられない。
自分ひとりが舞台裏でゲームでもしているかのように私を取り残して全てが進んでゆく。
目の前で起こっていること、通り過ぎる無数の人びと。
思い出せ。私は母の運転する車に従姉と姉と乗っていた。渋滞した国道、海を眺めていた後ろの車に追突された時のこと。
思い出せ。その後私が何をしていて、目の前で起こる出来事にどう向き合ったかを。
大したことじゃないようでいて、それは私の一生を暗示している。
死について考えると全てが無に帰してしまう。全てが嘘っぱちになる。それほどに死は絶対的なのだ。
生きている間に人間ができることについて考えてみるといい。おしなべて暇つぶし以外に何もない。
気持ちの悪い見栄、的外れ同士の争い、無言の相互監視。
部屋に入ってきた虫を殺すのはなぜだ?
自分の死などあり得ないとすら思う。死を考えないまま生きているから何も本当らしく感じられない。
目を瞑ったり、ゲームをしていれば、いつの間にか問題が立ち消えているなんて考えてはいけない。
誰もがみんな、この世界にはうんざりしていて、それぞれの対処法を身につけている。
駅で顔を真っ赤にして怒鳴る人、気が済むまで叫んだらいい。
成功など求めていない。百万円が降ってこなくてもいい。
ささやかな静謐と心の安寧、そして願わくば、あなたとの、ふざけたワルツをもう一度。