宇宙をぶらぶら漂流中

時松功平です

8月11日

いつの間にか昇っていた太陽に十分過ぎるほど加熱された部屋の中で目を覚ました。飼い猫は押し入れの陰に横たわったまま瞬きもしないので、生きているのか死んでいるのかもわからなかった。

私は猫に話しかけたりはしないので、言葉をかける代わりに手をポンと叩いて注意を惹いた。眼球が動き、猫が生きていることが分かった。あまりの暑さに眠ることも立ち上がることもできずに、太陽をひたすら呪うしかなかったのかもしれない。

心配になった私はすぐさま窓を閉め、冷房を入れて室温を下げてやった。

猫はともかく、私は灼熱の朝は大歓迎だ。眠っているだけで汗をかいているので、なんとなく健康的だし、寒い冬に比べて目覚めもいい。顔を覆う汗を手で拭うときの感触はいつだって快楽的に思い出される。やはり私は夏が好きだ。近頃の私は布団も敷かず座椅子を枕にして畳の上で眠っている。

今日は休みだったけど何処かへ出かけるということはなかった。炎天下の中、中華料理屋で焼飯と餃子を食おうとスケボーに乗って駅前までは行ったものの、盆休みということで閉まっていた。代わりに八王子ラーメンを食ったが、熱い醤油スープもその中の麺も美味く感じられなかった。ラーメンはあまり夏向きではないのかもしれない。

家へ帰り、本をいくつか読んだ。クライマックス前まで読んでいたもののアクシデントにより鞄の中で生卵まみれになって放置していたハインラインの『宇宙の戦士』を最後まで読んだ。この本のケツには第二次大戦当時、日本陸軍の兵士だった訳者による解説に端を発して巻き起こった、この作品の「ファシズム性」をめぐった日本の読者たちの論争が掲載されており、世代間の認識の違いが浮き出ていたり、政治などに関わらないSFじゃないと楽しめないという考えを持つ人がいたり、作品を読んでいない人からの罵倒の手紙など、大変興味深かった。個人的には、ハインラインは何世紀も前からの歴史による知識と自分の所属した米国海軍の生の経験を照らし合わせて得られた軍事国家の性質を地球連邦という架空の国家に出力してみせただけで、必ずしもハインライン本人が法家であるとかファシストであるとか戦争の美しさを喧伝しているという風には思えなかった。単なる思考実験という感じを受けた。

そして、丸山健二の『群居せず』を読んだ。これはエッセイ集なので、ふと思い出しては本棚から抜き取って、目次から気になるタイトルを摘んでは読んでいる。感情的で大雑把な女性蔑視とダサい妄想内暴力だけはどうにも頂けないが、同時代の人々のでたらめさや欺瞞の告発は抉るような鋭さを持ち、冷静で誰に対しても近づきすぎず、文章は虚飾なく知的誠実さを感じられる。群居せず、犬とバイクへの愛が漏れているところも、人柄が一貫しているようで実に面白い。

夕方からはトマス・ピンチョンの『インヒアレント・ヴァイス』(2009年)に取りかかった。3600円のハードカバーだ。バイト先の書店で買ったもので、新品ピカピカ。心してページをめくる。LAに住むヒッピーの探偵が主役で、最近読んだチャールズ・ブコウスキーの『パルプ』(1994年)を思い起こさせたが、70ページ読んだ時点では設定以外の繋がりは特に見出せていない。しかしロックスター社のゲーム「グラウンド・セフト・オート」シリーズ(1997〜)からもキャラクターデザインやイベントシナリオなどに両作品との類似性を見い出せる。

もう2時20分か!

他には、作っている同人雑誌の制作段階が進展したり、ネカフェに忘れていたワイヤレスキーボードを取りに行ったり部屋を片付けたりした。

もう寝る

明日は精神の強壮剤として映画でも観に行くつもりだ。