宇宙をぶらぶら漂流中

時松功平です

kiroku

今日は6時ごろに目が覚めた。昨日は休日だったのにも関わらず、まぶたは重く体は鉛のようだった。仕事が始まる少し前にキッチンで朝食を食った。牛乳とシリアル。食っているとマディが仕事着でキッチンにやって来た。仕事前に煙草とコーヒーを摂っていたら動悸がおさまらなくなったと言って苦しそうにしていた。励ましや心配の言葉をそう多く知らない僕は、Just breathとだけ応えた。すると彼女はいつになく真剣そうな顔で一点を見つめてなんとか落ち着こうとしていた。僕はこれ以上なんと言っていいかわからないし、深呼吸の邪魔をしても悪いので、なるべく目を合わせないようにそのままうつむいてシリアルを食い続けた。間が悪く食い終わってしまったので、僕が次に取れる行動は皿を洗って仕事場に移動すること以外になかった。そっと席を立つと彼女はありがとう、呼吸しているうちに楽になったよと声をかけてきた。僕は労わるようにおおよかったと応えて皿を洗って部屋を離れた。それからいつも通りのクソ面白くもない仕事の支度をした。マディはそのまま仕事を休んだようだった。それから僕は割り当てられた部屋をルーティーンにしたがってだらだら掃除した。今日はオーディオブックで日常英会話の教材と、催眠術士の書いた本を聴きながら仕事をした。昼になったので、日本人のTが自分の割り当てられた部屋のベッドシーツを引っぺがしているところに飯にしようよと声をかけた。Tはいいよと応えたが、なんだかそのときの表情が固いことが気になった。飯を食っている間も、Tはあまり機嫌が良さそうではなかった。Tの水筒に僕の腕が当たったとき、殺すぞと言われた。直後に笑いながら冗談だとフォローを入れてきたし、その後仕事中に会ったりした時には元気いっぱいにいろいろ話しかけてきたけれど、僕は今でも悲しい気持ちだ。いい年して殺すぞなんて言える人をどうして大切に思えるだろう。どうにか本人にこの非難の気持ちを伝えたいと思っているのだが、どうにも明るく話しかけられるとそうした気勢が削がれてしまう。自分の臆病さに気が滅入る。

炎天下の中仕事をしていると、喫煙所にマディがいた。フードを深く被ってマスクをして、いかにも具合悪そうな顔をしていた。それでも煙草をやめられないのはなぜだろう。治りたくないのだろうか。

さて、ハウスキーパーの仕事が終わり、自分の部屋に戻っているとTがドアをノックしてきたので中に入れた。Tが明るい感じで何やら喋ってきたが、今はもうなんの話だったのかよく覚えていない。仕事や同僚の話だったかとは思う。僕は他のハウスキーパーが見つけてきたビールを飲みにキッチンへ降りようと誘った。Tは酒が好きなので喜んで同意して、一緒にキッチンに行ってまた色々話をした。今日、仕事が終わったのが4時で、その後5時半からレストランでの仕事があるので、それまでの間、Tと話をしながらダラダラしていたのだ。レストランを今月いっぱいで辞めると伝えるつもりだとTに言った。

そしてその後レストランで働いた。ここでも僕は日本人のシェフたちの話に加わることなく、何度やったら覚えるの?など怒られるとき以外に話しかけられることはなかった。何度か「もうなるべく早く辞めさせてください」とその場で言いそうになったのだが、それもまたうまく言えなかった。怒られても返事すらしないこともあった。それでも仕事の後半になると色々明るい調子で話しかけられて、僕はへつらいながら聞かれたことだけを答えた。こんな頼り甲斐のない性格で、よくぞここまで生きてこられたものだと我ながら感心する。結局、退職の希望を伝えることはできなかった。明日にでも辞職希望のメッセージ文を考えて送らないといけない。